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2008/06/07

十一日目:アッリデヴェルチ

5月28日(月)豪雨

振動を伴う凄まじい雷鳴に目を覚ましたのは午前3時頃。レッジーナが起こした奇跡に対する天界の手荒な祝福なのか、レッジョは未明まで激しい雷雨となった。稲光の中で急に「あれは夢だったんじゃないだろうか」と不安になり、懸命に昨日の記憶をあれこれたどる。・・・大丈夫、夢じゃない。ちゃんと残留したよ・・・。安心して再び眠りに落ちた。
7時前に再び眠りから覚めたときには雷は止んでいたが、雨は土砂降りのままだった。もう帰るだけだから天気なんてどうでもいいや。

朝食を取りにサロンに降りていったら、サロンの正面にあるフロントの男性がクレジットカードを読み込む機械を手に溜息をついていた。そして私の顔を見るなり英語で一言。
「ダメだ、動かない・・・」
な、何ですと!私、ほとんど現金持ってないわよ!宿代カードで払えないと困る!
これはゆっくり朝食を取っている場合ではない。ホテルの傘を借りて近くのATMにお金を下ろしに行くと、そこには長蛇の列。そして自分の番が来た人が全員、しばらくすると不機嫌そうな顔をしてATMから離れていく。嫌な予感がする・・・。
やっと自分の番が来て、ドキドキしながらカードを差し込む。英語表示にして、暗証番号を打ち込み、「引き出し」を選び、引き出し金額を選択してエンターキーを押すが・・・。

いや~ん、お金が出てこないでカードだけ戻ってきちゃう!

2回繰り返したが駄目だった。すぐに別のATMまで走り、再び列に並ぶが結果は同じ。どうやら銀行のシステムがダウンしちゃっているらしい。困り果ててホテルに戻り、同じく困り果てているレセプショニストのお兄さんと一緒にため息をつく。アントネッロが迎えに来るまでまだ1時間ある。1時間あれば復旧するかもしれないという微かな望みを持って一旦部屋に戻った。
で、1時間後・・・。

やっぱりダメだ・・・

アントネッロが銀行巡りをするから車に乗れという。無駄な抵抗のような気がするんだけど、半ば強制的に車に押し込まれ、それから4つの銀行へ行った。全滅だったけど・・・。
再び困り果ててホテルに戻り、レセプショニストのお兄さんと協議した結果、ホテルの銀行口座に日本から宿代を送金するということで決着。バカ高い送金手数料がかかってしまうが選択の余地はない。もう空港へ行かないとフライトに間に合わないのだ。

慌しくホテルを発ち、慌しく空港でアントネッロと別れの挨拶をし、フライトの30分前にチェックイン。セキュリティチェックでペットボトルの水を持っていることを指摘され、「待っていてやるから今すぐ全部飲め」と太目の係員のお兄ちゃんに言われるが半分しか飲めなかった。有無を言わさず取り上げられたピサの空港とはまったく違うのんびりした対応。さすがレッジョだ。

復路のエアチケットはレッジョカラブリア⇒リナーテ、マルペンサ⇒成田という経路だった。何故こんな面倒なルートを選んだかというと、一番安いチケットだったから。ただそれだけである。事前に調べたのはリナーテ空港⇔マルペンサ空港間をシャトルバスが運行していることだけ。何の根拠もなく所要時間は30分程度と思い込んでいた。これが大きな間違いであることに後で気が付くのだが・・・。

リナーテ空港に到着し、スーツケースを受け取ってマルペンサ空港行きのシャトルバス乗り場を探す。相変わらず凄い雨だ。ミラノは長袖を着ていても少し肌寒い。と、その時、目の端に携帯電話で話をしているマッツァーリ監督の姿が入ってきた。あれ?もしかして同じ飛行機に乗っていたの?!
監督はすぐに自分を見つめる私に気が付き、歩み寄ってきて右手を差し出した。込み入った話をしているようで、電話をしながらの握手だったけど、こんなところで出くわしたことが嬉しかった。
周囲の人たちがマッツァーリ監督に気が付いてしまい、監督を囲んで次々とサインや握手を求めてくる。電話が終わるまで待って、監督とちょっとだけ話をしたかったけど、これはちょっと無理そうだ。思いがけないところで会えただけで、もう一度握手できただけで満足しよう。
そのままロータリーの奥まで進み、ようやくシャトルバスの乗り場を探し当てた。で、時刻表を見て腰を抜かしそうになる。何と次のバスまで1時間以上待たなくてはならない。何でこんなに本数が少ないのよ!どうしよう、タクシーで行っちゃおうか。このまま待とうか。
時刻表の前で考え込んでいると、目の前に黒いリムジンが止まった。中から金髪の長い髪を後ろで一つに縛った背の高い男性が降りてきて、うやうやしく後部座席のドアを開けた。誰か偉い人を迎えに来たらしい。誰だろう?振り向くと、そこに立っていたのはマッツァーリ監督だった。まだ携帯で話中だ。長電話だにゃー。
髪の長い男性は監督の荷物を素早くトランクに積み込み、後部座席のドアを指して「どうぞ乗ってください」というように促すが、監督はそれを遮って私の元にやって来た。相変わらず電話しながらだったけど、もう一度私に右手を差し出す監督。さっき握手したばかりなのに。(笑)
「アッリデヴェルチ(さようなら)」と言うと、監督はニッコリと微笑み、握った手に力を込める。そして急いで車に乗り込むと、車の窓から短く手を振ってくれた。すぐに車は発車し、土砂降りの雨の中を走り抜け、あっという間に見えなくなる。それでも私はいつまでも車が走り去った方向を見つめていた。監督の温かい大きな乾いた手の感触が消えないように握手した右手を左手で包み込み、ザーザーという激しい雨音を聞きながら、呆けたようにその場に立ち尽くしていた。
神様、最後にもう一度監督に会わせてくれてありがとう。こんなステキなエンディングを用意してくれて本当にありがとう。きっと3年間監督を一生懸命応援してきたご褒美だね・・・。

シャトルバスは雨の中をひたすら走り続けるが、1時間経っても一向にマルペンサ空港に到着する気配はない。それもそのはず。帰国してから調べたら、「リナーテ空港はミラノの中心から約10km南に位置し、マルペンサ空港はミラノの中心から約50km北西に位置する」とあった。ということは約60㎞の距離があるわけで、そりゃ30分じゃ着くはずないわ・・・。結局この日は大雨だったからかもしれないが、所要時間約1時間30分。国際線に乗るというのに、アリタリアのチェックインカウンターで搭乗手続きをしたのが出発時間の40分前(大汗)。しかしフライトが30分遅れていたので、なんとか免税店で買い物をする時間を持てた。家族や同僚や友達へのお土産を手当たり次第に走り回って購入し、くたくたになって機内の席に沈み込む。ああもう、朝からなんて慌しい一日なんだ・・・。

成田まではボーっとしていた。私の席のパーソナルテレビが壊れていたので映画も観られなかったし、それ程空いていなかったので席の移動もできなかった。本を読む気にもなれずに、ただただイタリアでの楽しかった日々を思い起こしていた。
本当にいろいろなことがあったなぁ。今迄で一番濃い遠征だったなぁ。
うとうとすると夢の中で自分は必ず熱狂のオレステグラニッロにいた。爆発するような歓声。セリエアー!セリエアー!の大合唱。目を覚ますと暗い飛行機の中にいる味気ない現実に悲しくなり、ずっと夢を見ていたくて再び目を閉じる。それの繰り返し・・・。
こうしてレッジーナの奇跡の残留に立ち会うことができた私の2007年イタリア遠征は無事に終了した。

とんでもない長い遠征記に最後までお付き合いいただいた皆さん、長い間ありがとうございました。このあと番外編その2「トスカーナの苦虫野郎」へ続きます。
南イタリア遠征記2007 | Comments(4) | Trackback(0)
Comment
映画のような
ラストですね。
安い経路で考えたら、結局高くなることが国内でもたまにありますが、海外でそれ(シャトルバス)は困りますね。それでも乗り切ってしまうリーメイさんはすごい。
・・・次のシャトルバスまで1時間。シャトルバスが1時間。焦るなきっと。
お疲れ様でした。
完璧なラストシーンでした
今思うと、あれはサンプドリアが遣した迎えの車だったんだなぁと。サンプの車なのか、サンプが手配したリムジンタクシーサービス(そういうのがイタリアにあるのかどうか知らないけど)だったのか分からないけど。
去年はあまりにドラマティックな遠征だったため、日本に帰ってきてからもなかなか日常生活に戻れなくて苦労しました。

安い経路はやはり何か危険が潜んでいますね(笑)
飛行機は乗れなかったら乗れなかったでどうにかなるのはアメリカで経験済みですけど、航空会社が自分に最適な代替案を提示してくれるまで粘らないといけないので骨が折れます。
何事もなくスムーズに進むのが一番ですが、そういうトラブルを経て自分がまた一つ強くなれるのが嬉しかったり。って、それ以上強くなってどうするんだって話ですが。^^;
奇跡の残留の影で貴女もかなりの奇跡起してたんですね(笑)
帰りの空港でマツマツに偶然バッタリとは^^;
いやー神様っているもんですね。

それにしてもこの最終日は結構トラブル続きだったんですね。
イタリアは銀行も適当なのか(苦笑)

この年の遠征記はもの凄い特別な感じになりましたねー。
まさに奇跡の証人。
プロヴィンチャ好きな私としては、とても楽しく読ませて頂きました。
次回作も期待してます、とても。
特定の神様は信じていませんが、やはりいますよね。必死に頑張っていれば何かしら報われるものだと確信しました。
今年レッジョの街中でアモルーゾとばったり会ったのも、来季はいなくなるから神様が会わせてくれたんでしょうか・・・(遠い目)

>イタリアは銀行も適当なのか(苦笑)
何もかもテキトーです。でも自分もテキトーで許されるので楽といえば楽です(笑)

>この年の遠征記はもの凄い特別な感じになりましたねー。
はい、自分でもそう思います。この年を凌ぐドラマティックなシーズンがこの先またあるといいのですが。って、ペナルティーは勘弁ですけど。^^;

2008年1月遠征は短い日程で全力で駆け抜けた感じなので、遠征記もダッシュで駆け抜けようと思います。

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