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2006/09/26

二日目⑭:パヴェルのためなら何処までも

ディナーは迷わず『LE PALME』で取ることにした。チビマメ君、元気かなあ。
海岸通り沿いのテラス席に行くと、まだ時間が早いので若いイタリア人カップルが1組いるだけだ。出迎えてくれたのは去年いた金髪のお姉さんじゃなくて40代前半くらいの非常に流暢な英語をしゃべる男性。この人、今までレッジョで出会った誰よりも英語が上手いぞ。とてもフレンドリーで、且つ大人の落ち着いた雰囲気を漂わせている。ちょっとセクシーな口ひげを生やしているので、以下勝手にマスタッシュと呼ぶことにする。
「ちょうどいい、君の仲間が来ているよ。今ちょっと外しているけどね」
そう言うとマスタッシュは飲みかけのワインボトルとグラスが載っているテーブルを指した。仲間ってどういうことだろう。よく分からないけど、とりあえず隣のテーブルに着いてみた。そしてマスタッシュが持ってきたメニューを開いて驚く私。
おーい、Iちゃん!メニューのアイテムが去年の3倍に増えているぞ!
この日私が選んだのは、シュリンプ・カクテルとスパゲティ・ボンゴレビアンコ、それと去年お気に入りだったシチリア産白ワイン。二人以上だとシェアしてあれこれ少しずつ食べられるんだけど、一人だとせいぜい2品が限界。いろんな物を食べたい食いしん坊な私はちょっと悲しい。

オーダーを済ませてしばらくすると、隣のテーブルの主が戻ってきた。腰まで伸びた黒いウェービーな髪。とってもグラマラスな体に派手な作りの顔。どことなく退廃的なムードを漂わせているのは酔っているせいかしら。年の頃は20代後半?ちょっと判断が難しい。日本人にも見えるけど、そうじゃない感じもする。年齢国籍不詳な女性はドカッとイスに座ると、向かいの椅子の上に足を投げ出し、背もたれに頭を載せてクークー寝てしまった。相当酔っているらしい。それを見て眉を顰めるイタリア人カップル。そこにマスタッシュが私のワインを持って戻ってきたが、私のテーブルに来る前に椅子からずり落ちそうになっている彼女に話しかけた。「君にはベッドが必要だね」。
すると彼女はむっくり起き上がり「まったくレッジーナの糞サポーターがアホなことしやがったせいで・・・」とすごい剣幕で愚痴り始めた。こりゃ日本人じゃないなと彼女の英語を聞いてそう思った。日本人が一生懸命しゃべっている英語じゃない。マスタッシュが私の仲間といったのは、たぶん外国人女性の一人旅仲間だという意味だったのだろう。
彼女に思う存分愚痴らせてあげた後、マスタッシュが私のテーブルに来てワインボトルを置いた。
「彼女昨夜は寝てないみたいなんだよ。ユベントスの試合を見るために苦労してレッジョまでやってきたのにバーリの開催になっちゃってね。頭に来て自棄酒飲んでいるところ」
そうなんだ。開催地がバーリになったのを知らずに来ちゃったのね。そりゃ荒れるわな。
「君もユベントスファン?」
「ノー。レッジーナファン」
「レッジーナファンだって?日本人プレーヤーがいなくなったのに?」
「3年連続でレッジョに来てるんだよ。ほら、見て」
マスタッシュに去年のサンタガタの写真を見せて盛り上がっていたら、隣のテーブルの彼女が虚ろな目をこちらに向けた。
「こっちにおいでよ。彼女はレッジーナファンなんだって。選手や監督の写真がたくさんあるよ」
マスタッシュが呼ぶと、ユベントスファンの彼女はダルそうに立ち上がり、フラフラしながらこちらに来た。そして半分据わった目で私とマッツァーリ監督の2ショットを見ると、つまらなそうに「ハーン」と呟いた。レッジーナには全然興味なさそうね。(笑)
「君のも見せてあげれば?」とマスタッシュに促され、彼女はポケットから携帯電話を取り出して私の前に差し出した。待ち受け画面に映っているのはネドベドと彼女の2ショット。
うわ~、かっわい~い!!!
大スターとは思えないほど明るい素な感じの笑顔を浮べるネドベドもかわいいんだけど、もっとかわいいのはネドベドに肩を抱かれて幸せ一杯の彼女の笑顔。私の目の前にいる虚ろな目の女性とは別人かと思うような乙女っぷり。いや~、女って好きな人の前ではかわいくなるもんだね。人のこと言えないけど。(笑)
「ステキな写真ですね」と笑いかけると、彼女は満更でもなさそうに唇の端を持ち上げた。そして自分の席に戻って、再びまどろみ始めた。

私としばらくレッジーナの話題で盛り上がっていたマスタッシュがイタリア人カップルに呼ばれて行ってしまうと、ユベントスファンの彼女が再びむっくり起き上がって日本語で私に声を掛けた。
「ねえ、もしかして日本人?」
あ、日本人だったんだ。ちょっとビックリ。
「はい。そちらも日本人だったんですね」と返すと、「なに言ってんの。私なんて日本人にしか見えないじゃん」と彼女。いや、それはないと思うぞ。(笑)
「レッジョに住んでんの?」という思いがけない質問には笑ってしまった。レッジョに住んでいるなら、マスタッシュとは英語じゃなくてイタリア語でしゃべっているよ。
「日本から10日間の予定で南イタリアに来ているの。あなたは?」
「私はドイツ在住。パヴェルもそろそろ引退が近くなったし、モッジのバカのせいで来季はどこでプレーするかわからないし、もしかしたらパヴェルのユーベでの生試合を見られる最後のチャンスかもしれないから、わざわざレッジョまで来たんだけどね。まさかバーリまで行く羽目になるとは・・・。イタリア語全然わかんなくてイライラするし、もうイタリアってサイテー。でもここまで来たらパヴェルのために何処までだって行っちゃうよ」
おお!この人バーリまで行くんだ!
聞けばこれから10時間以上掛けて夜行列車でバーリに向かうらしい。その後は列車の発車時刻が迫るまで、今回のホーム試合没収の原因となったレッジーナのバカサポに対して、また、つい最近発覚したユベントスの不正問題に対して、あらん限りの怒りを私にぶちまけた。言いたいことを全部言ってスッキリした彼女は、自分のテーブルの下に置いてあった小振りのスーツケースを手にすると、「じゃあ、行くから」と酔いの醒めない体でフラフラと立ち上がる。大丈夫かしら?
「よい旅を!」と声をかけると、彼女は振り向かずに左手だけを挙げて私に応え、すっかり暗くなった海岸通りを中央駅に向かって歩き始めた。もう一日早く会いたかったな。そうすれば私も勢いで彼女と一緒にバーリまで行けちゃったかもしれない。一日とは言わない、せめて昼間に知り合えていたら・・・。そうしたらサンタガタから戻ったあとに荷造りして同じ夜行列車に乗ったのに。

「君もバーリまで行くの?」
シュリンプカクテルを持ってきたマスタッシュに尋ねられ「わからない」と曖昧な笑顔を浮べる私。なんか私って中途半端だな・・・。レッジョまでは来たのに、そこから先に進めない・・・。マッツァーリ監督に対する愛が足りないのかしら。いや、彼女のように「好きな人のためなら何処までも」と突っ走れないのは、やはり年齢のせいだと思う。今の私に一番足りないのは無茶をするための体力よね。ああ、年は取りなくないわ・・・。(涙)
なんかいろんなことを考えてしまって、ボンヤリしながら食事を取った。美味しかったはずだけど、味はよく覚えていなかったりする。

帰り間際に女性のカメリエーレにチビマメ君の写真を見せて、今日は非番なのかと尋ねたら、なんとチビマメ君は同じ系列の別の店に異動になっていた。なんだ、残念。再会を楽しみにしていたのにな。いや、チビマメ君が再会したいのは私じゃなくてIちゃんだろうけど。(笑)
南イタリア遠征記2006 | Comments(0) | Trackback(0)
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