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2010/07/25

レッジョ編vol.19【サントスの涙と笑顔】

今季レッジーナには試合中に前十字靭帯断裂をやってしまった選手が二人いる。一人はセストゥ。もう一人はサントス。サントスのその瞬間は先週末にルイージ・フェラーリスで目撃してしまった。そして月曜日にローマで靭帯再建手術を受けたサントスは、木曜日に松葉杖姿でサンタガタに姿を現した。正確に言うと松葉杖ではない。ステッキの様な形状の杖にカフと呼ばれる肘(腕)を固定するサポート機構が備えられているロフストランドクラッチを使用していたが、面倒なのでここでは松葉杖と書くことにする。
松葉杖をつきながらクラブハウスから出てきたサントスは両手が塞がっているので閉まっている門を開けられずに立ち往生。とりあえず左手で持っている松葉杖を門と鉄柱の間に挟んで強引に開けようとしたが上手く行かない。それを見た中学生くらいの少年ファンが慌てて手助けしようとしたが、その前にサントスがイライラして左手の杖を物凄い勢いで門に投げつけた。思うように松葉杖を使いこなせない苛立ちを隠せないサントス。口に手を当てて、アワアワする少年。近くにいた私も驚いて一歩も動けなった。
サントスは門を開けることを諦めてプレスルームの壁に背中を預けてしゃがみ込むと、膝の上に顔をうずめてしまった。肩が小刻みに震えている。泣かないでサントス・・・。
その場にいた誰もがどうしていいか分からずにオロオロするばかりだった。なんて声を掛けていいのか分からず、黙ってサントスを見守るしかなった。彼の無念さを思うと無闇に声なんて掛けられない。この先半年はピッチに立てないのだから。
しばらくするとサントスは顔をあげたが、出待ちしていたファンの視線が自分に注がれているのに気付くと、決まり悪そうにそっぽを向いた。睫が濡れている・・・。
確かその日はファヴァスリ・ドクターが車でサントスを送っていったと思う。



翌金曜日、私はアルヴァレス相手に大失態を演じたわけだが、駐車場へ向かうアルヴァレスとカルモナを見送った後でクラブハウスの方を振り返ると、いつの間にか門の外にサントスが出てきていて10人以上の出待ちファンに囲まれていた。昨日の涙が嘘のように杖を小道具に漫才みたいなことをしてレッジョの民から笑いを取っている。ブラジル人は立ち直りが早いんだろうか。
その様子を少し離れたところから眺めていた私に気付いたサントスが声を掛けてきた。
「イタリア語話せるか?」
「少しだけ」と答えると、いつ日本に帰るのか聞いてくる。
「えーと、日曜日にグラニッロでカリアリ戦を観て、月曜日にレッジョを発つの」
一生懸命イタリア語で説明すると、「毎年レッジョに来てるって聞いたけど、イタリア語下手糞だな」と言われた。

ピント・グレイソン・ドス・サントス、、、なんてストレートな奴なんだ。

「英語で話せよ。俺も英語なら少しは分かる」と英語でサントスが言う。あら、ここにも意外なイングリッシュ・スピーカーが。今季は英語を話す選手がたくさんいて嬉しいわ♪
「おまえ何ヶ国語話すんだ?」という質問に「英語と日本語だけ」と答えると、すかさず「スペイン語は?」と尋ねてくる。「話せない」と言う私に「じゃあ、どうしてスペイン語で手紙を書けるんだ?完璧なスペイン語だったぞ」とサントス。
あ、そう。貴方も私の手紙を読んだのね?
やはりカルモナとヴァルデスは皆に私の手紙を読ませているのね?
「ナイショ」
別に内緒でも何でもないけど、説明が面倒なので適当にあしらう。するとサントスは肩をすくめてイタリア語でレッジョの民に何事か話し、それを聞いた彼らがドッと沸いた。
「何て言ったの?」
私の問いにサントスはイタズラっぽく答えた。
「ナイショ」

ピント・グレイソン・ドス・サントス、、、気に入ったぜ。

イタリア語が話せなくて輪の外にいた私を、サントスは実に自然に彼らの中に入れてくれた。これってなかなかの高等技術だよ?自分が時々通訳もどきをしているからよく分かる。違う言語を話す人を一つの話題で盛り上がらせるのって本当に難しいんだから。
こういうさり気ない気配りが出来る人だからレッジョの民にも人気なのだろう。彼がいかに愛されているかは、その時間そこにいたファン全員が嬉しそうに彼を囲んでいたことからよく分かった。
松葉杖で両手が塞がっているからサインは頼めないけど写真だけお願いしてみよう。
「写真撮っていい?」カメラを構えた私にサントスは最高の笑顔をくれた。

そこにアルヴァレスの車が駐車場から戻ってきて停車した。すぐに助手席に座っていたカルモナがドアを開けて飛び出してくる。後部座席にはヴァルデスも座っていた。今日はアルヴァレスの車でサントスを送っていくらしい。アルヴァレスとカルモナが甲斐甲斐しくお世話してサントスを後部座席に座らせてあげている。微笑ましい光景だ。
後部座席に収まったサントスは、全開にした窓から私に向かって両手を顔の前で合わせ、眉間に皺を寄せて腹の底から「アリガトー!!!」と叫んだ。それを見てレッジョの民が大爆笑。アルヴァレスもヴァルデスも「しょうがないなコイツ」って感じで苦笑している傍らでカルモナだけが笑っていなかった。大笑いしているレッジョの民を見て、サントスを見て、アルヴァレスを見て、ヴァルデスを見て、最後に泣きそうな顔で私を見つめる。恐らく皆の前でからかわれた私が傷つくんじゃないかと心配になったのだろう。彼自身が皆の前でからかわれて悔しい思いをしたことがあるのかもしれない。全くこの子はなんて目で私を見るんだろう。
本当は「その挨拶は日本式じゃないから」とサントスを説教しようと思ったんだけど、カルモナを泣かせるわけにはいかない。しょうがない、お付き合いしてあげるか。ということで、サントスとそっくりそのまま同じポーズで顔の前で両手を合わせ、眉間に皺を寄せて、腹の底から「アリガトー!!!」と叫んでみた。
レッジョの民、再び大爆笑。カルモナもアルヴァレスもヴァルデスも座席の背もたれに仰け反って笑転げている。よかった、カルモナが笑ってくれた。サントスは私のリアクションに大満足で親指を立ててきた。私も親指を立てて応える。あーあ、本当に私って何てサービス精神が旺盛なんだろう。こんなお笑い路線じゃなくてエレガントなレディを目指したいのに。

笑いが収まったアルヴァレスがゆっくり車を発進させた。4人が車の中から「チャオ!」と笑顔で手を振ってくれる。特にカルモナは窓から身を乗り出して、いつまでも後ろを振り返って手を振ってくれた。カワイイわぁ♪
走り去っていくアルヴァレスの車を見送りながら、サントスの昨日と今日の違いに想いを馳せる。
たった一日で彼はどうやって気持ちを切り替えたんだろう。昨日はファンが声を掛けられないほど打ちひしがれていたのに。松葉杖を使いこなせない苛立ちというよりは、こんな大事な時期に大怪我をした自分自身に対する苛立ちを受け止められないでいたのに。
今日彼が見せてくれた陽気さの裏側にあるものを知っているから胸が切なくなった。あんな大怪我をした後にあんなに明るく振舞えるなんて、あんな笑顔が出来るなんて、とんでもなく気持ちが強い人なんだと思う。

今遠征のベスト・スマイル賞

ナイス・スマイル、サントス。ちょっと惚れそうになったよ。

南イタリア遠征記2009 | Comments(0) | Trackback(0)
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