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2010/07/24

エピローグみたいなプロローグ

2010年5月16日午前10時、レッジョでの全日程を終了した私はローマ行きの飛行機に乗るためにレッジョの空港に向かっていた。途中でお抱え運転手のアントネッロがパン屋の前で停車して「レッジョで一番美味いパン」を二つ買って持たせてくれた。以前板貫さんにも持たせたらしい。
空港まで送ってくれたアントネッロと別れを惜しんだ後、チェックインカウンターで搭乗手続きを済ませ、荷物検査の際に没収されるのが分かりきっているペットボトルの水を飲み干した。そしてゴミ箱を探して空港内のバールへ行き、発見したゴミ箱にペットボトルを投げ捨てて振り返った瞬間、驚いて声を上げそうになった。
バールの一番端の席にカルモナが一人で座っていたのだ。
2、3歩前に行って手を伸ばせば届く距離にいる。じっと見ていたら視線を感じてくれるかと思ったけど、まるで“ロダンの考える人”みたいな前かがみの姿勢で微動だにせずに座っている。視線は前方の一点を見つめていて、もしくは何も見ていなくて、本当に彫刻みたいに動かない。こんなに近くから見ているのにカルモナ全然気付いてくれないよ・・・。
まあジョカトーレだから周りから視線を感じるのはいつものことか。周囲に気付かれて大騒ぎされたくないのかもしれないし、声をかけない方がいいのかも。そう考えて黙ってその場を離れ、荷物検査を抜けてゲート前の待合スペースに腰をかけた。この時間に空港にいるということはカルモナもローマへ行くということだ。そのうちこのゲートにやってくるだろう。

搭乗開始時間が迫ってきた頃、カルモナがやっとゲート前にやってきた。しかし、仕切りの向こう側にある隣のゲートの待合スペースへ、うつむいたまま足早に行ってしまった。やはり誰にも気付かれたくないみたいだ。
搭乗開始時刻になると気の短いイタリア人たちが我先にと列を作る。いつも私はこの時間になるとトイレに行き、列が短くなってから並ぶことにしている。だからこの日も長い列を尻目にトイレに行き、ゆっくり用を足してから、再びゲート前に戻る前にカルモナが隠れている隣のゲートの待合スペースに目をやった。他に人がいないガランとしたその場所の一番奥の長いすにカルモナは隠れるように座っていた。

うひゃ~、カルモナがサングラスしてる~!!!

お子様のくせにサングラスなんかしてんじゃねーよ!と心の中で突っ込みを入れたときに、更に驚くべきものが目に入った。

隣に女が座っている!彼女いたんだ!

カルモナの隣には髪の長い女性が座っていた。1冊の雑誌を二人で仲良く読んでいる。
その時カルモナが私に気がつき、「あ!」という形に大きく口を開けた。隣の女性も「え?なに?」という感じで長い髪をかき上げながら私を振り返る。カルモナは口を「あ」の字にポカーンと開けたまま私を見つめている。
さて、どうしよう。彼女といるのに邪魔しちゃいけないよね?
ということで、お口ポカーンで私を見つめるカルモナに視線を残しつつゲート前待合スペースに戻ったが、まだ列が長かったのでもう一度椅子に座った。

1分もしない内にカルモナが列に並びにやってきた。先に彼女が歩いてきて私の前を通り過ぎる。うわ~、むちゃくちゃキレイな女の子だ。多分チリ人。こんな美人と付き合っているのか。その後ろでサングラスを外したカルモナがキョロキョロしている。もしかして私を探している?
カルモナの視線が私のところでピタリと止まった。するとさっきまで人目に触れないように隠れていたくせに、ビックリするくらい大きな声で「チャオ!チャオ、チャオ!」と満面の笑みで手を振ってきた。周囲の人たちがカルモナに気付き、次いでカルモナが挨拶した相手、要するに私に視線が注がれる。カルモナは回りを全然気にせず、もう一度「チャオ!」と私に手を振る。私も「チャオ!」と手を振り返すと、すげえ嬉しそうに笑顔を弾けさせた。そうかそうか、空港で私に会えたことがそんなに嬉しいのか。つーか、彼女と一緒なのに私に懐いてきちゃっていいんだろうか?
カルモナは彼女と一緒に列の最後尾に並ぶと、隣に彼女がいるにもかかわらず、彼女の髪を撫でながら後ろを振り向いて、まだ椅子に座ったままの私に視線を送ってくる。お、おい。
もしかして、この子って性質(たち)の悪いプレイボーイタイプなんだろうか?
そしてカルモナは私に目配せすると笑顔で2、3度小さく頷いた。これは今までカルモナが何度か私にしてきた「いま僕と君は目が合っているよ」という確認作業。そのまま私から視線を外さない。ずっと私を見つめたままだ。こらこら、そろそろ前を向かないと美人の彼女に怒られるぞ。
何だろうコレは。「僕、彼女がいるけど、それでも僕のファンでいてね」というアピールなんだろうか。やがて彼女に話しかけられたカルモナは、最後にニッコリ私に笑いかけてから前を向いた。まったく最後の最後まで張り倒したくなるくらい可愛い子だった。

飛行機の座席は全然違うところだった。その後は姿を見かけなかった。というか、着陸後もあえて探さなかった。最後にステキな思い出をくれたから、もうこれで十分だ。彼女と一緒なのに邪魔するのはスマートじゃない。私いい年した大人だしね。でも、邪魔はしないけど彼女には一言言いたい。

お嬢さん、カルモナを泣かしたら許さないわよ。←それって普通男性に言うセリフでは?

こんな優しい男の子と付き合っているなんて物凄くラッキーだと思う。本当に羨ましいわ。
選手は試合後に家族や恋人といるときは、人によっては女性ファンに対して妙にそっけなかったりする。だけどカルモナは私を大事なファンとして扱ってくれた。注目されたくなくて直前まで隠れていたにもかかわらず、サングラスを外して私を探し、大きな声で挨拶して手を振ってくれた。ありがとう。本当にありがとう。こんなに私に懐いてくれる選手、この先もう出てこないだろうなぁ。来季は間違いなくレッジーナにいないだろうけど、どこでプレーしていてもずっと応援するよ。約束する。

思えば3年前、レッジーナの奇跡の残留を見届けたあの年、ミラノのリナーテ空港でマッツァーリ監督とばったり出くわしたっけ。そして今度はカルモナ。いつもその時一番会いたいと思っている人にちゃんと会わせてくれる。神様って本当にいるのかもしれない。
今年の遠征もいろいろあったなぁ。ほとんどが楽しい思い出ばかりだ。目を閉じると様々なエピソードが鮮明に蘇ってくる・・・。



今年もまだ書き終えていない前年度の遠征記と同時進行で更新していきます。今シーズン開幕する前に2009年遠征記は終了させたいなぁ。

南イタリア遠征記2010 | Comments(0) | Trackback(0)
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